自衛隊の訓練学校では、実弾(本物の弾薬)を用いた射撃訓練をやらせてもらいました。
号令とともに200m先の的に伏せたまま5発、しゃがんだまま5発の射撃を行います。
もちろん、的は動きませんし私に撃ち返してくることもありません。
的当てゲームの感覚で同期と点数を競い合っていました。
射撃訓練が一通り終わってから2ヶ月くらいでしょうか。
空砲(実弾と違って発射音しかしない弾薬)を用いた模擬訓練に参加しました。
その訓練では銃にレーザー、体にセンサーをつけます。
対戦相手を射撃すると負傷状態となりビーと音がなります。その人は訓練から退場です。
もちろん自分が敵から撃たれても音がなり退場します。
模擬訓練は攻撃と防御に分かれて、どちらかを全滅させた(負傷状態にさせた)方の勝ちという訓練でした。
ちなみに状況としては草むらが覆い茂った広い空間で、互いに最初300mくらいは距離をとっています。
私も最初は「射撃訓練の成果を見せてやる」と意気込んではいたものの。
実際にはうまくいきませんでした。
なぜうまくいかなかったと思いますか?
私はせっかくの訓練なので本当に戦場にいるつもりで参加しました。
すると、やはり「死ぬのが怖い」という感情が頭を支配します。
「死ぬ」とはつまり「敵から撃たれる」ということです。
しかし、敵を射撃するためには相手から見える位置に顔を出し、狙いを済ませて大きな音とともに発砲しなければなりません。
「顔を出した途端にバレて殺されるんじゃないか」
「射撃したら自分の場所がバレて迫撃砲を落とされるんじゃないか」
という恐怖から敵部隊を撃つ構えをすることすらほとんどできませんでした。
撃つにしてもあまりに急いでしまい、射撃訓練で学んだ狙撃を全く生かせず私の弾は敵にかすりもしませんでした。
理論上の正解は
「敵から撃たれる前に撃って、すぐ体を隠す」なんでしょう。
しかし、体を出して構えて狙いを定めて撃つ行為なんて私は1秒ではできません。
(本当は出来なきゃダメなんでしょうが世の中の何人ができるんだか)
よくて2、3秒でできたとしましょう。
その2、3秒でさえも「死の恐怖」があるとその時間がとても長く感じられます。
実際の射撃と訓練での射撃は何かしら違うのだろうなと予想はしていましたが、あまり想定していなかった部分なのでとてもためになる訓練でした。
「先手必勝」「一撃必殺」
この2つを基本として勇気を出して体を晒さないと、敵は撃てない。
この教訓が人生で役に立たないことを願うばかりですが、なかなか知り得ない教訓だと思ったので紹介しました。
ちなみに銃の代わりにテレビリモコンでチャンネルボタンを押すと広範囲の敵がみんな負傷状態になるそうです。