力学、好きですかーーーーーーー!
あら、なんも返事がありませんね。
「等加速度運動」では元気にしていた生徒の大半が、「力のつり合い」以降で黙ってしまいます。
それはなぜか・・・。
答えは「力の矢印」が正しくかけないからです!
力の矢印とは力の作用点、向き、大きさを表現するモノです。
力学の問題を解く上では欠かせません。
ルールに従って書けば簡単なのですが、これを苦手としている人が多い。
「なんとなく」で書いている人が散見されます。
もちろん、そのルールを習得すること自体は一手間です。
ここでは力の矢印を書くためのルールを説明します。
- 全ては重力から始まる
- 作用・反作用の法則
- 糸の張力
- 摩擦力(ここでは解説せず)
1.全ては重力から始まる
力学の問題は基本的に重力なしには成立しません。
重力とは地球から引っ張られる力です。
質量あるものには重力が発生します。
本当は物体全体に対して重力がかかるのですが、表現しにくいため物体の重心に作用点をおきます。
重心が何かって? 次回をお待ちください。
2.作用・反作用の法則
ある物体と物体が接触しているとき、基本的にはお互いに力を与え・受けています。
このとき両者の力は大きさが等しく、向きが反対です。
写真ではJohnがTomに引っ張られていますが(水色)、それと同時にTomはJohnに引っ張られています(赤)。
物理では「物体にはたらく力(が受ける力)」をかきます。与えた力ではありません。
ですので、青の矢印の根っこはJohnに、赤の矢印の根っこはTomにあります。気をつけましょう。
ちなみに
作用反作用は重力とて例外ではありません。
地球があなたを引っ張るとき、あなたもまた地球を引っ張っています。
ただし質量が大きすぎる(地球・壁・床)、或いは質量がゼロ(糸)の物体にはたらく力は
高校物理では考えませんので省略しましょう。
3.糸の張力
張力とは
「糸や弦が両端にくっついている物体を引っ張る」力
です。
矢印が描きやすいようにいうと、両端の物体にはたらく力です。
図でいうと、糸が手を下に引っ張る力と、糸がヨーヨーを上に引っ張る力ですね。
矢印の作用点はそれぞれ手とヨーヨーです。
張力のルールとして、両端の力は大きさが等しく向きが逆向きです。
Why?
糸の質量が無視できることと関係しています。
(説明は簡単にできないので省略)
作用反作用の法則に基づくと、逆に手は糸を上にひっぱりヨーヨーは糸を下に引っ張ります。
しかし、糸のような質量を無視できる物体を観察することはないので糸にはたらく力は描きません。(かいてもイイけど出番はない)
ちょっと特殊なパターンとして滑車が絡むケースがあります。
例として滑車に糸をかけて、両端に物体を吊り下げるパターンをあげましょう。
最初は重力をかき込んで、次に張力を描き込みます。
(右図は、はたらく力を全て書いているわけではありません。ご容赦を)
張力は右図のようにかきます。
具体的に想像している方なら、上側の張力の描き方に違和感を覚えるのではないでしょうか?
「滑車の横側で糸から引っ張られているなんてことあるか?」
その通りで、実際に図のように働いているわけではありません。
本当は右図のように、分布上にはたらいています。
糸が滑車に乗っかっているわけですから横側ではなく上側の方が力をよく受けていますよね。
正確に描くならこうなのですが、毎回このように描くのも大変ですよね。
実は、これらの分布的に働いている力は先ほどの上図のように合成することができます。
しかも上2つの矢印は張力のルールである「両端の力は大きさが等しく反対向き」というルールを満たしています(そうでないと困るんだけども)。
普段の張力と同様にかけるのはありがたいですね。
おさらい
それでは、実際に矢印をかく練習をしましょう。
右図は天井に吊り下げられた滑車に糸をかけ、両端に人と物体が繋がっているものです。
ただし、糸の質量は無視できるものとします。
まずは鉛筆を手にとって自力で考えてみてください。
アドバイス
最初のうちは力の矢印は全部かきましょう。
天井や床にはたらく力を考慮することはありませんが、
はじめから省略していると必要な力まで省略してしまうことがあります。
守破離という言葉にもある通り、この分野が苦手な方は丁寧に全ての力を考えましょう。
省略するのは慣れてきてからで結構です。
さて、まずは重力の矢印をかき込みましょう。
図の赤い矢印は人と箱と滑車の重力です。
天井と床の重量は大きすぎるので省略、糸は重量を無視できるため省略しています。
滑車の重量も無視できる場合が多いですが、今回は無視せずにやっていくことにします。
重力が終わったら次は物体と物体が接触している場所を探します(糸は後回し)。
すると、人と床が接していることがわかります。
ポイント
・床は人から力を受けている(下向き・点線)
・人は床から力を受けている(上向き・実線)
作用・反作用の法則より、この2つの力は互いに逆向きで同じ大きさです。
しつこいようですが、床のような質量が大きすぎるものに働く力は普通考慮しないので、床が人から受ける力は点線で表記しておきます。
最後に張力を書きましょう。
張力とは「両端の物体が引っ張られる力」です。
図には糸が3つあるので書き込む力は6つになるはずですね。
滑車に働く張力の書き方は独特ですが直前に説明しましたね。
・左の糸に引っ張られるのは滑車と人。
・中央の糸に引っ張られるのは天井と滑車。
・右の糸に引っ張られているのは滑車と箱。
これで矢印の描く作業は終わり!
重力・作用反作用・張力を考えるだけでなんとかなるわけです。
まとめ
今回は物理のつまづきやすい分野として「力の矢印」の書き方を解説しました。
どうしても物理は暗記ではなく理解していく必要があります。
わからないという気持ちに妥協することなく学んでいきましょう!