ふりがなをふったのは歪みは「ひずみ」とも読むからです。
工学部出身だとむしろ「ひずみ」の方が馴染みがあります。
デッサンを独学していた頃の話です。
とある教本に以下のようなことが書いてありました。
「目の前の椅子や机をデッサンしてご覧なさい」と。
実際私は椅子をデッサンしました。
すると今度は次のような指示がありました。
「次に同じものを,そのものの輪郭を描くのではなく,その周りの空間の輪郭として描きなさい」と。
意味が伝わりますでしょうか?
日本地図で例えると,日本を描くのではなくその周りの海を描くイメージです。
結果的に描くものは同じ線なのですが,書き手にとってはまるで別の作業となります。
私は時間をかけながらもなんとか描き上げ,先ほどのものと見比べました。
すると確かに,線に勢いはないものの,周りの空間の縁として描いたものの方が本物っぽく(写実的に)描けていました。
教本曰く,「自分の中にあるイメージのせいで目の前のものを正確にインプットできない」そうです。
さらには「あなたは空間の縁を描くとき,線の長さや傾きを一本一本注意しながら描いたことでしょう」と書いてあり,図星だったので私はその教本を心から信用しました。
図星をつかれるとその人の能力を信用してしまう,という話は置いといて。
生徒のノートに書いてあった世界地図を見て,ふとこのことを思い出しました。
目の前のものを注意深く,細かく,じっくり観察するという行為はデッサンや書道でしかなかなか経験し得ないでしょう。
タイトルにもありましたが,「自分の中にあるイメージが認識を狂わせる」ことを身をもって体験しました。
そして「イメージの更新は周りの世界を注意深く観察して初めてできる」ということも。
とてもいい経験だったのについ先ほどまで忘れていました。
興味のある人は一度「毛の短い(輪郭がはっきりした)犬」を描くといいと思います。
多分,気づきがいっぱいのはずです。